JSAI（人工知能学会）は日本のAI研究を牽引する最重要学術組織として、2025年で設立39年を迎えました。最新のJSAI2025では参加者数4,939名を記録し、過去最高を更新しました。本記事では、JSAIの役割、全国大会の詳細、最新の研究動向について、詳しく解説いたします。
はじめに：JSAIとは何か？なぜ重要なのか
JSAI（人工知能学会）は、1986年7月に設立された一般社団法人で、人工知能（AI）に関する研究の進展と知識の普及を図り、学術・技術ならびに産業・社会の発展に寄与することを目的としています。本部は東京都新宿区津久戸町に所在し、AI分野における日本最大級の学術組織として機能しています。
JSAIが重要である理由とは？
JSAIの設立趣旨は明確です。情報処理技術は大量のデータに対して複雑な計算を高速に行う点では人間の能力を超えているが、思考という点ではほとんど無力である状況に対し、人工知能技術は大量の知識データに対して高度な推論を的確に行うことを目指し、諸学問に共通する知的活動の基本を担うものとして位置づけられています。
本記事で得られるメリット
この記事を読むことで、JSAIの全体像、2025年の最新動向、参加方法、そして日本のAI研究の現在地を包括的に理解できます。特に生成AI時代におけるJSAIの役割と今後の展望について、具体的な数値と事例に基づいてお伝えします。
JSAI全国大会の規模と影響力｜2025年の記録的成果
史上最多を記録したJSAI2025の実績
2025年度人工知能学会全国大会（第39回）は2025年5月27日から30日まで大阪国際会議場で開催され、参加者数4,939名（現地4,032名、遠隔907名）を記録しました。これは前年度から大幅な増加を示しており、参加者数4,922人、スポンサー数140団体と、いずれも過去最高を更新しています。
参加者の詳細な構成比率
参加者比率は一般79.6%、学生20.4%となっており、所属別では大学36.9%、公的研究機関3.0%、企業57.1%、その他3.0%という構成でした。この数値が示すのは、JSAIが純粋な学術イベントを超え、産業界との強い結びつきを持つ実用的なプラットフォームとしての地位を確立していることです。
発表件数の驚異的な増加
2025年大会では1,000件を超える非常に多くの発表が行われました。これは近年のLLMの隆盛により参加者数や発表件数が急激に伸びていることを反映しており、AI技術の発展スピードの加速を如実に示しています。
大阪・関西万博との特別連携
2025年大会の特筆すべき点は、EXPO 2025（大阪・関西万博）関連セッションや情報交換の場を設け、先端AI技術と万博の取り組みの相乗効果を探る試みでした。これにより学術研究と国際的イベントの融合という新たな可能性が示されました。
JSAIの主要活動と研究領域｜幅広い学際的アプローチ
中核となる学術活動
JSAIは年間を通じて多様な活動を展開しています。主要なものには以下があります：
- 年次全国大会の開催
- 学会誌「人工知能」の発行（隔月刊）
- 論文誌による査読付き研究発表
- 各種研究会の運営
- 国際シンポジウムの開催
- AI関連セミナーやワークショップの実施
多岐にわたる研究分野
人工知能の分野は多岐にわたり、「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」すべてを範囲とし、これらに関心を持つすべての者に参加資格が与えられている点が特徴的です。具体的な研究領域は以下のように広範囲に及びます：
基礎研究分野：機械学習、深層学習、自然言語処理、コンピュータビジョン、知識表現、推論システム
応用研究分野：ロボティクス、医療AI、金融AI、教育AI、エンタテインメントAI、社会システム
学際研究分野：マルチエージェント、創発システム、ヒューマンエージェントインタラクション、生成AIの安全性、社会のトラスト、産業創出
情報発信と啓蒙活動
関連分野を含めたセミナー・シンポジウム・研究会の案内による人工知能全般の啓蒙と産業界への浸透を積極的に行っており、専門家だけでなく一般社会への知識普及にも力を入れています。
2025年のAI研究トレンド｜JSAI2025から見る最前線
生成AI安全性への注目度急上昇
2025年の大会で特に注目されたのは、大規模言語モデルの安全対策に関するセッションでした。AIセーフティ・インスティテュート（AISI）による安全・安心で信頼できるAIの実現に向けた評価手法や基準の検討・推進が重要テーマとして扱われています。
産業応用の実例が豊富に発表
企業参加者が過半数を占める中で、実際のビジネス課題解決事例が多数発表されました。例えば：
- DeNAによるゲーム『逆転オセロニア』でのAI活用デッキ構築支援
- 医療現場での構造化データ転記作業の自動化
- 推薦システムにおける人気バイアス対策
空間・時系列データモデリングの進展
2020年度大会から継続して開催されており、現在のJSAIにおける主要なテーマとして確立された空間・時系列データのモデリング手法が、物流最適化や都市計画などの実用分野で活発に研究されています。
JSAIへの参加方法と入会メリット｜学術と実務の架け橋
入会資格と条件
これらに関心を持つすべての者に参加資格が与えられている（年齢や学歴など実質的な入会制限が無い）点がJSAIの大きな特徴です。学術研究者だけでなく、企業のエンジニア、データサイエンティスト、AI関連業務従事者など幅広い層が参加しています。
全国大会参加の価値
全国大会では以下のような価値を得ることができます：
最新研究動向の把握：J-Stageで公開される全発表論文により、最新の研究成果を網羅的に把握可能
ネットワーキング機会：企業展示会場などを通じて様々な参加者との情報交流が活発に行われる
実務応用のヒント：学術研究と産業応用の接点を見つける絶好の機会
継続的な学習機会
年間を通じて開催される研究会、セミナー、ワークショップにより、継続的にAI技術の最新動向をキャッチアップできます。
AI倫理と社会責任｜JSAIの取り組み
生成AI時代における倫理的配慮
2023年4月25日に公表した生成的人工知能についての声明では、「出力したものをうのみにするといった無条件な受け入れ方をせず、長所や短所を理解した上で利用することが大切」として、適切な利用を呼びかけています。
研究者への責任ある開発の呼びかけ
研究者には「自覚を持ち、野心を持ちつつも節度ある研究開発」を呼びかけており、技術発展と社会責任の両立を重視しています。
学会としての規範整備
人工知能学会アンチハラスメントポリシーに従って開催するなど、学術コミュニティとしての健全性確保にも力を入れています。
よくある質問｜JSAI参加時の疑問を解決
Q: JSAIの年会費や参加費はどの程度ですか？
A: 具体的な金額は会員種別により異なりますが、学生向けには優遇制度があります。全国大会への参加費も学生と一般で異なる設定となっているため、詳細は公式サイトで最新情報をご確認ください。
Q: 企業での実務経験のみでも参加できますか？
A: はい、可能です。年齢や学歴など実質的な入会制限が無いため、実務経験を通じてAI技術に関心を持つ方々も多数参加されています。実際に企業参加者が過半数を占めています。
Q: 発表論文はどこで閲覧できますか？
A: 全発表論文はJ-stageにて公開されており、無料でアクセス可能です。
Q: オンライン参加は可能ですか？
A: はい、ハイブリッド開催により遠隔907名が参加したように、オンラインでの参加も可能です。
Q: 国際的な研究者との交流機会はありますか？
A: あります。2025年大会では万博との連携により国際的な視点での議論が活発化しており、今後も国際シンポジウムなどを通じて海外研究者との交流機会が提供されています。
まとめ：JSAIがAI時代の未来を切り開く理由
JSAIは単なる学術団体を超え、日本のAI技術発展の中核的役割を担っています。参加者数4,939名という過去最高記録は、AI技術への社会的関心の高まりを象徴しています。
2026年への展望：次回のJSAIは2026年6月9日（火）～12日（金）に群馬県高崎市で開催予定となっており、記念すべき第40回大会として更なる発展が期待されます。
AI技術が社会のあらゆる分野に浸透する現在、JSAIは学術研究と産業応用、そして社会実装の架け橋として、ますます重要な役割を果たしていくでしょう。AI分野に関心をお持ちの方は、ぜひJSAIへの参加をご検討ください。
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